私は、国税局で大企業の調査をしていました。
(ここでいう大企業とは、資本金1億円以上の会社を指します。)
大企業には、海外に現地法人を持っている会社が多いです。
そういった会社の調査でよく見つかる税務上の誤り、それは
現地法人に対して支援していながら対価をもらっていないこと、です。
現地法人から対価をもらわないと日本で課税される
現地法人を作ると、日本親会社は、現地法人の支援をするものです。
支援すること自体は何ら問題ありません。
しかし、その支援に対して、適正な対価をもらわないと、調査官は、移転価格課税や寄附金課税の話に持っていきます。
例えば、
- 日本親会社の従業員が現地法人に赴いて技術指導を行っている
- 日本親会社が培ったブランドやノウハウを現地法人に使わせている
- 日本親会社が現地法人の経理や広告宣伝などをやってあげている
- 日本親会社が現地法人にお金を貸している
などです。
これは、
現地法人が負担すべきコストを日本親会社が負担している、
または、もらうべき対価をもらっていない、と税務当局から見られます。
国レベルで見ると、
日本が損をして、外国が得をしている。
つまり、日本で課税すべき利益が外国へ移転している。
これが、日本の税務当局にとって面白くない。
調査官が、このような事実を発見すると、移転価格課税か寄附金課税の話に持っていきます。
移転価格課税なら、実際には対価をもらっていなくても、独立企業間価格で対価を回収したとみなして課税します。
寄附金課税なら支援に掛かった費用が現地法人に対する利益供与であるとして課税されます。
なかなか理解されない
調査の現場で、このような指摘をしても、会社や税理士さんには、なかなか理解してもらえないことがあります。
よくある主張は、
「子会社なんだから対価なんてもらわなくてもいいじゃないですか。」
この主張は問題外です。
親子関係であっても、税法はドライに判断していきます。
国内取引でも同じですね。
ほかに、よくある主張は、
「現地法人にコストを負担させて潰れたら、当社の損失につながります。当社のためになるんだから、当社で負担すべきです。」
気持ちは分かります。
でも、調査官は受け入れないですね。
他人の会社だったら、そんなことしてますか?と言って一蹴します。
(確かに子会社の再建、整理の場合の取り扱いは存在しますが、よほどの特別な場合でない限り認めないです。)
この手の調査は、私の感覚では、ふわふわしたものを否認する感じでした。
物証と言えるものがあまりなく、言葉で説得していくので、修正申告に持っていくのがとても難しい。
なので、時間を掛けて会社の理解を得る必要があります。
調査官も必死です。
海外取引への課税は、部内で高く評価されますから。
修正申告に応じなければ、更正に持っていくつもりで臨んでいました。
中小企業でも注意が必要
今後、日本の人口は減り市場も縮小していくと言われています。
そうなると、中小企業においても、国外の市場を求め現地法人を設立する日本企業が増えていくのではないでしょうか。
海外に会社を作れば、移転価格といった国際税務の問題に直面することになります。
しかし、国際税務に詳しい税理士さんは少数です。(特に福岡では。)
福岡から世界に羽ばたく会社をサポートする。
そんな税理士になるのが私の夢です。
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