COLUMN
初めて従業員を雇ったら:毎月の源泉徴収と年末調整
結論
従業員に給料を払うと、会社は給料から所得税を差し引いて(源泉徴収)、国に納めます。そして12月に、1年分の給料と控除をもとに税額を計算し直します(年末調整)。
人を雇ったら、まず税務署への届出と、従業員からの申告書の受け取りから始めます。海外に住むご家族を扶養に入れる方や、日本に住んでいない従業員・役員がいるときは扱いが変わるので、早めに確かめておくと安心です。
1. 雇ったら、最初にすること
たとえば、4月に1人目の従業員を雇い、4月25日に最初の給料を払う会社なら、次の2つが最初の仕事です。
- 税務署へ「給与支払事務所等の開設届出書」を出す:新たに給与の支払を始めたときは、給与支払事務所等を開設してから1か月以内に、事務所の所在地の税務署へ出します。
- 従業員から「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を受け取る:その年の最初の給料を払う日の前日まで(年の途中で雇った人は、就職後最初の給料の前日まで)に、従業員から会社へ出してもらいます。会社で保管し、税務署へ送る必要はふだんはありません。
この申告書を出した人の給料は、源泉徴収税額表の「甲欄」で税額を求めます。出していない人は「乙欄」になり、差し引く税額が多くなります。ほかの会社でも働いていて、そちらに申告書を出している人も、こちらの会社の給料は乙欄で求めます。
出典:国税庁 No.2502「源泉徴収義務者とは」 / A2-1「給与所得者の扶養控除等の(異動)申告」 / No.2511「税額表の種類と使い方」 / No.2520「2か所以上から給与をもらっている人の源泉徴収」
2. 毎月、給料から差し引いて納める
給料を払うたびに、税額表で所得税を求めて差し引き、原則として給料を払った月の翌月10日までに納めます。4月25日に払った給料の分は、5月10日が期限です。
従業員が常時10人未満の会社は、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を出すと、半年分をまとめて納められます。
| 源泉徴収した月 | 納める期限 |
|---|---|
| 1月〜6月 | 7月10日 |
| 7月〜12月 | 翌年1月20日 |
申請書を出した月の翌月末日までに却下の通知がなければ承認されたものとみなされ、申請書を出した月の翌月に源泉徴収する分から特例の対象になります。開設の届出と一緒に出しておくと、毎月の手間が減ります。
出典:国税庁 No.2505「源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例」
3. 12月に、1年分を精算する(年末調整)
毎月の源泉徴収は、税額表による「仮の計算」です。12月の最後の給料のときに、1年分の給料と、扶養控除・保険料控除などをもとに正しい税額を計算し直し、取りすぎた分は従業員に返し、足りない分は差し引きます。年末調整の対象は、扶養控除等申告書を出していて、その年の給料が2,000万円以下の人です。年の途中で入社した人も、前の勤め先の源泉徴収票があれば合わせて精算します。
令和8年分は、変更点が多い年です。
- 基礎控除の引上げ:令和8・9年分は、合計所得金額が489万円以下の人は104万円になりました(金額によって段階があります)。
- 給与所得控除の最低保障額の引上げ:令和8・9年分は、65万円から74万円に引き上げられました。
- 扶養親族の所得要件:合計所得金額 58万円以下 → 62万円以下(収入が給与だけなら、123万円以下 → 136万円以下)。
- 23歳未満の扶養親族がいる人の生命保険料控除の特例:新しい一般生命保険料控除の上限が、令和8・9年分は6万円になりました。
これらは原則として令和8年12月1日に施行され、令和8年分から使います。11月までの毎月の源泉徴収は今までどおりで、12月の年末調整で、新しい基礎控除などを使って1年分を精算します。また、この改正で新しく扶養の要件に当てはまるようになったご家族がいるときは、扶養控除等申告書を出し直してもらう必要があります。
なお、令和9年1月以後に払う給料は、改正後の源泉徴収税額表で計算します(防衛特別所得税も含まれた表になります)。
出典:国税庁「令和8年分 年末調整のしかた」昨年と比べて変わった点 / No.2665「年末調整の対象となる人」 / 年末調整がよくわかるページ(令和8年分)
4. 外国人の社長の会社で、つまずきやすい点
海外に住むご家族を扶養に入れるとき
日本に住んでいないご家族(非居住者)を扶養控除の対象にできるのは、次の人だけです。
- 16歳以上30歳未満の人
- 70歳以上の人
- 30歳以上70歳未満で、次のどれかに当たる人
- 留学のために日本を出た人
- 障害者
- その年に、従業員から生活費・教育費として38万円以上の送金を受けている人
書類が必要で、出す時期が分かれます。
| いつ | 何を |
|---|---|
| 扶養控除等申告書を出すとき | 親族関係書類(親族であることを示す書類)。留学の人は留学ビザ等書類も |
| 年末調整のとき | 送金関係書類(生活費などを送ったことを示す書類)。30歳以上70歳未満の人は38万円送金書類 |
| その年最後の給料の前日まで | 申告書に、生計を一にする事実を書いて出す |
配偶者控除・配偶者特別控除も、海外に住む配偶者について受けるときは、年末調整のときに「親族関係書類」と「送金関係書類」が要ります。
親族関係書類は、次のどちらかです(日本語の訳文も必要です)。
- 戸籍の附票の写しなど日本の公的な書類と、ご家族のパスポートの写し
- 外国の政府・自治体が出した書類で、ご家族の氏名・生年月日・住所が載っているもの(例:戸籍謄本、出生証明書、婚姻証明書)
1つの書類で足りないときは、いくつかを組み合わせて証明します。パスポートの写し以外は、原本が必要です。
送金関係書類は、次のような書類です(日本語の訳文も必要です)。
- 銀行の外国送金依頼書の控え(その年に送金したもの)
- 家族カード(従業員が代金を払う、ご家族名義のクレジットカード)の利用明細
- 電子決済手段(ステーブルコインなど)を国外へ移す依頼書の控え
つまずきやすい点
- 知人に頼んで現金を渡した分は、書類が無いので控除を受けられません。
- 送金はご家族ごとに必要です。配偶者にまとめて送った生活費は、配偶者の分の書類にはなりますが、お子さんの分の書類にはなりません。
- その年の送金の書類は、全部出すのが原則です。同じ人へ年3回以上送ったときは、明細書と、その年の最初と最後の送金の書類で足ります(残りの書類は従業員が保管します)。
- 38万円送金書類は、その人への1年の送金が合計38万円以上と分かる書類です。最初と最後の送金の合計が38万円未満なら、足りない分の書類も出します(例:合計30万円なら、ほかに8万円以上の分)。
- 家族カードの利用明細は、カードを使った日の年の分になります。
会社としては、年の初めに従業員へ必要な書類を伝え、送金の控えを送るたびに残してもらい、12月の年末調整の前に、ご家族ごとに書類と訳文を集めておくと慌てません。
出典:国税庁 No.1180「扶養控除」 / A2-1(上記)/ 「非居住者である親族について扶養控除等の適用を受ける方へ」(令和7年6月) / 国外居住親族に係る扶養控除等の適用について
従業員・役員が日本に住んでいないとき
日本に住所(生活の本拠)がなく、日本に引き続き1年以上の居所もない人は「非居住者」です。非居住者に払う給料は年末調整をせず、日本の税金の対象になる部分に、原則として 20.42% で源泉徴収します(令和9年以後も合計は20.42%です)。対象になるのは、従業員なら日本で働いた分の給料です。日本の会社の役員の報酬は、原則として海外で勤務した分も含めて対象になります。
日本と海外を行き来する役員の方は、居住者か非居住者かで扱いが大きく変わります。また、租税条約で扱いが変わることもあるので、国ごとに確かめます。
出典:国税庁 No.2875「居住者と非居住者の区分」 / 所得税法 161条1項12号イ・212条1項・213条1項1号
5. 住民税は、別の仕組みです
住民税は、会社が給料から差し引いて、従業員の住む市町村に納めます(特別徴収)。原則は翌月10日までで、福岡市では、従業員が常時10人未満の事業所は申請して承認を受けると、年2回(6〜11月分は12月10日、12〜5月分は6月10日)にまとめられます。
その準備として、1月1日現在の住所地の市町村へ、原則として1月31日までに「給与支払報告書」を出します。
出典:地方税法 317条の6・321条の5 / 福岡市「給与からの特別徴収」
この記事は、2026年11月8日・9日に確認した国税庁などの公表資料にもとづく一般的な説明です。個別の事情によって扱いが変わることがあります。
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